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Ormonde Woman (2002)

Ormonde Woman (2002)

公私ともにオーモンド・ジェインのシグニチャー・セントとして、屋号を冠したオーモンド・ウーマンは、2002年「世界で初めてブラック・ヘムロックの香料をふんだんに使用した香り」として英語版ウィキペディアにその名を連ねているのですが、香りを紹介する前にこの「ブラック・ヘムロック」はOJのサイトですら「ソクラテスの毒、ブラック・ヘムロック」として謳い文句をあげている程誤解を招きやすい植物なので、ここで整理をしたいと思います。

  • ブラック・ヘムロック…日本名ツガ、英名Black Hemlock、マツ科ツガ属の常緑性針葉樹。毒性はない。
  • ヘムロック…日本名ドクニンジン、英名Conium、セリ科ドクニンジン属の2年草、通称ヘムロック。毒性が強く臭気がある。ソクラテスがドクニンジンとアヘンと混ぜた毒薬を盛られて絶命し有名に。

オーモンド・ウーマンに使われているのは勿論毒性のないブラック・ヘムロックで、ヘムロック(ドクニンジン)ではないのですが、自分たちですら「ブラック・ヘムロック=ドクニンジン(ヘムロック)」とのたもうているのは、狙った話題作りなのか、真意はわかりません。当然、仕上がった香水にも毒性はありません、念のため。

それはさておき、香りとしては非常に良く出来たウッディ・グリーンフローラルで、OJのベースと言うべきグリーン・フローラルノートがふんだんに香るなか、世界初、しかも最大量搭載した天然ブラック・ヘムロック香料の針葉樹らしいパインニードルやシダーなどのドライですっきりした渋い芳香と手折った様な新緑のグリーンが層となって乗り、リンダ・ピルキントンお得意のフルーティなジャスミンと、最も深い所にはきちんと甘さのあるサンダルウッドやアンバーが底支えしているので、単純なドライ風味のグリーンノートに終わらず、ヘムロックのざらつきのある透明感からまろやかさが透けて見えるようなモザイクを織りなしています。

香り立ちは一貫して穏やかで、動くと香り、止まると消えるといった、肌と一体化しながら何層も香りを放つ、古典的名香の面立ちも備えていて、「良く出来ている」の一言に尽きます。オーモンド・ウーマンの売りはドクニンジンではなく、新しさの中にきちんと古典が生きている、前衛絵画の巨匠は皆デッサンがうまかった、みたいな出来栄えだと思いますので、あまり毒々言わない方がキワモノ扱いされなくてよい気がします。

ちなみにこのオーモンド・ウーマンも、ムエットや手首で嗅ぐとイマイチ癖が出すぎて使いづらそうな香りですが、全身にまんべんなくスプレィして全体像を見極めると、無駄口をきかない一方で、人の話はよく聞いていて、少し低い声でたまに言うジョークが猛烈冴えているような、いわゆる地頭のよさそうな知的美人が目に浮かびます。ブラック・ヘムロックはさておき、いい香りを看板役者にもって来たなと思います。なお、ペアフレグランスとしてオーモンド・マンもあり、こちらもブラック・ヘムロック満載です。

オーモンド・ウーマンEDP、新形状ボトル。画像提供:ユナイテッド・パフューム社