La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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The World of Perfumed Soaps 6. Italian companies

5)イタリアの薬局・化粧品会社

 

  • サンタマリアノヴェッラ(国内直営店有) 

1612創業で世界最古の薬局、サンタマリアノヴェッラは、遡る事400年、13世紀にドミニコ会修道士達が病める人々の救済へと、祈りの中修道院の庭にハーブを手植え、粛々と調剤をし、解毒浄化の為にローズウォーターを販売し、石鹸やオーデコロン、クリームを作ったのが始まりで、その薬効あらたかな製品はイタリアのみならず清代の中国まで交易品として渡ったほど。日本でも大人気のSMNですが、石鹸に処方されている香りが単なる芳香ではなく、確かに心身の浄化を感じられる所が、さすが創業より一度も潰れずに教会を支えてきた薬局の石鹸だけあります。現在も昔ながらの製法を守り(とはいえいわゆる無添加石鹸プラス天然香料という訳ではなく、他の香水石鹸同様、品質を保持する為きちんと各種パラベンやフェノキエタノールなどの防腐剤、合成香料、プロピレングリコールなどの湿潤剤、生地に白さを与える酸化チタン、金属封鎖剤も使用しています)熟成後数か月かけて乾燥させ、溶け崩れの少ないしっかりした生地に仕上がったSMNの石鹸はどの香りも甘さが控えめなのが特徴ですが、お奨めはユニセックス向けのザクロとメンズソープで、女性向けのミルクソープが香り抑えめであるのに対し、最も香りが濃厚で、複雑なオーデコロンの香りがよく再現できているザクロや、メンズソープの中でもバーチをアクセントにした渋いアンバー香のアンブラと、白檀というよりは甘味が全くない為パインニードル系木材チックでそれが案外くせになるサンダロが、香りを楽しむという点ではお奨め。浴室に置いておくだけで浄まりそうな深い香りで、泡の香りを吸うと、肺が綺麗になるかと思う程、深く渋い香気に驚きます。中々日本ではどうかと思いますが、逆にこういったオリエンタル系の香水石鹸は、特に日本ではあまり出回っていないので、ある意味貴重なラインナップだと思います。強い香りに湯あたりしそうな方には泡立てると固形状より香りがほのかになる女性向けミルクソープが良いでしょう。日本のくちなしとは全く異なるすっきりと青味のあるグリーン・フローラルのガーデニア、アクセントに入れたつもりのスミレが裏番はって主張するパウダリーなアイリスがお奨め。ロジェガレより一段甘さ控えめ&シャープなカーネーション、何故かベルガモット風味満載のジャスミンも面白いです。新商品のタバコトスカーノも、火をつける前の優しい葉タバコの香りにバニラアーモンドのベースノートが優しく、有名なアーモンドソープも素材の香りと言った風情で、いい意味で脱力系です。ちなみに、本国イタリアでは地元の方に人気の石鹸ベスト3はローズ、アイリス、ザクロで、観光客の人気ベスト3はポプリ、アーモンド、ザクロだそうです。

公式HP http://www.smnovella.it/

日本HP http://www.santamarianovella.jp/

 

ロッテルダムのハイエンド・パフューマリー、リアンヌ・ティオ・パルファムのSMNソープページを飾る写真(上)はLPT提供のもの。鉄板で人気のザクロと、メンズソープは女性にもお奨め

 

  • レルボラリオ(日本未発売、個人輸入先あり)

イタリアを代表する自然化粧品メーカー、レルボラリオは、民間療法以上、医療未満ともいうべきエルボリステリア(ハーブ薬局)に健康を委ねているイタリア人の絶大な信頼を得ています。詳細は2013年11月、第5章でご紹介したカナトゥーラのインタビューをご参照頂くとして、香りのシリーズには数多くの香水石鹸がラインナップされています。4.5ユーロ(1個)から10ユーロ程度(2個入)と良心的な価格ながら、コロン同様全体的に子供だまし感の全くない、石鹸ながらに良く出来た香りがそろい踏みで、かつ各種香りに由来する植物エキス配合、お肌への効果も兼ねています。香りにウッディ・オリエンタル系が揃っているため、石鹸もミルラ・アンバー・サンダルウッド・パチュリなど日本のメーカーでは中々出会えない香りが多く、オリエンタル好きも満足の一つが見つかります。香りによってしっかりとしたマルセイユ石鹸系、包丁で切れる程柔らかで香料たっぷりタイプ、グリセリン透明石鹸と多種多様ですが、いずれも100%植物性かつ保湿を考えられており洗いあがりも滑らかで脂が抜けすぎません。何といってもお奨めは、パウダリー感炸裂のアイリスで、同じ香りのオーデコロンと完全同期。またタンドネージュ(ロレンツォ・ヴィロレーシ)の手軽なバスラインとしても楽しめます。その他クラシック好きにお奨めのアンブラリクイダは、同じアンバー系でもSMNのアンブラとはベクトルの違う、資生堂ホネケーキを髣髴とする日本人には懐かしい化粧石鹸の香り。コロンの香りとは別物なるも何故かグリーンアルデヒド系のしゃっきりした面立ちも感じるサンダロ、コロンの甘さがもう少し引いてウッディムスクなメアレス、球根ブリブリ感が良く出ているナルシソも素敵です。コロンでは上品かつ迷いのないムスクなムスキオビアンコは、ムスクの持つソーピーな表情がそのまま香りに凝縮。ロングセラーのミルラはアンブラリクイダを穏やかにした印象。香水石鹸が気に入ったら、ぜひオーデコロンやボディクリームへと進んで、トータルにお楽しみ下さい。

 

 

公式HP(英語版あり)http://www.erbolario.com/

購入先(Ca'Natura)  オンラインショップ

 

 

香りのシリーズ中一押しはアイリス。

 

  • ランセ(香水のバスライン8種、クラシック・シリーズ4種、フローラル系など13種。国内未発売)

創業1795年の歴史はさておき、香水を数多く出しているものの、やっぱり石鹸屋の印象が強いランセ。フランス発のイタリアブランドで、本店はSMNミラノ店のはす向かいにあります。香水はフォルテが代理店ですが石鹸は残念ながら未発売です。食用に出来るほどの良質な植物油と(公称)天然香料を使用したトリプルミルの良質な石鹸は箪笥に入れて衣類の香り付けに出来る芳しさに加え、パッケージもレトロでクラシック香水好きにはたまりません。むちむちの泡立ちと滑らかな洗いあがりはある意味SMN以上のクオリティです。お奨めは各シリーズ中香りが濃厚なクラシック・シリーズとメンズのF・ランセで、イチオシは元祖オーデコロンの香りで王妃の水、ジャンマリファリーナの分身、アックア・ディ・コローニャはSMNのコロンやソープと同じく、吸った香気で肺まで綺麗になりそう。(公称)グラース産ジャスミンを使ったクレーム・グラースはランセ石鹸中最も保湿成分が多く女性向け、1個220gのデカさも充実のレトロな(昭和)バスクリン・ジャスミン香に耽溺して下さい。Fランセはサンダルウッドを主軸にしたスイートなウッディノートで、欧米で人気のお香、松栄堂の堀川を髣髴とする甘露な白檀は、SMNのサンダロがシヴすぎて…という向きや女性にもお奨め。フローラルシリーズは、全般的にクラシック・シリーズに比べ上品かつ微香で、香り慣れしていない方への上質なバスラインとしてプレゼントに良さそう。アイリスは粉っ気控えめ、印象はただ「上品」。ランセの石鹸はサイズ、価格帯がバラバラな一方で何故か基本的に6個箱入り、よって価格も高いものでは1箱80ドル以上もしてしまうのが日本進出を阻む主因?単品展開希望。

 

公式HP(英語版あり)http://www.rance1795.com/ 

購入先(Europerfumes) http://www.ranceusa.com

 

疲れが吹き飛びそうなアックア・ディ・コローニャの香り。6個は多いなあ

 

 

 

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