Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Caron Les Parfums Rares

Caron Les Parfums Rares

フランスのグラン・パルファム、キャロンは、かつてはカネボウが代理店として一時代を築きあげましたが、カネボウ倒産と前後して一時日本撤退、その後2010年より現在の代理店、フォルテが再上陸させました。カネボウ時代から数多くの名香がここ日本でも愛され、特に「黒水仙」「クリスマスの夜」「石の花」と日本名で親しまれていた代表作は、キャロンとしても「レ・パルファム・ラール」(類いまれな香り)として公式ウェブサイトにて堂々紹介しています。

1970年代のヴィンテージボトル達

Caron Les Parfums Rares 全ラインナップ

・Narcisse Noir / ナルシス・ノアール(1911)
・Nuit de Noel / ニュイ・ド・ノエル(1922)
・Bellodgia / ベロージア(1927)
・Fleurs de Rocaille / フルール・ド・ロカイユ(1933)
・Royal Bain de Caron / ロワイヤル・バン・ド・キャロン(1941) 
     ※ユニセックス系・本来は香水風呂用。もとはRoyal Bain de Champagneという名だったが、シャンパーニュの商標権に負け改名
・Muguet du Bonheur / ミュゲ・ド・ボヌール(1952)
・Infini / アンフィニ(1970)
・Pour une Femme de Caron /プール・ユヌ・ファム・ド・キャロン(1949/2001)
・Lady Caron / レディ・キャロン(2000)

 このうち、女性向け8種について、紹介します。

Narcisse Noir (1911)

キャロンが1911年に発売し、世界的大ヒットとしてだけでなく20世紀の名香を語る上で絶対外せない傑作、ナルシス・ノアールです。かつては淡谷のり子ご愛用の香りといわれていましたが、既に淡谷のり子が誰なのか、コロッケもあまり演じなくなったし知らない方も多くなったと思います。生誕100余年、そのまんま「黒水仙」(1951年)を始め、海外のみならず日本でも映画の一こまに登場するなど、「本物」が銀幕に登場することでも有名です。

「黒水仙」の名を持つこの香りは、現実には存在しない黒水仙なるものを、 オレンジブロッサム、ローズ、ジャスミン、ウッドムスクの調香で表現し、幽玄な色香を醸し出しています。よくオリエンタルノートと紹介されて いますが、フローラル・フルーティに近く、語られているほど濃密な香りではなく、むしろ瑞々しさに溢れており、気温の高い季節でも肌が芳香を放つような香り立ちはさすがです。現在パルファムとEDTの2濃度展開で、EDTの国内販売があります。

ナルシス・ノアールは、現行品なら国内で取り扱いのあるEDTはもちろん、可能ならパルファムをお試しいただきたいと思いますが、それよりもたった20年程度前のオードトワレのほうが、動物的なムスクの存在が一層色香を演出して おり、黒水仙という香りのイメージを強調しています。もし見つかるなら、カネボウ時代のナルシス・ノアールのEDTをお試し下さい。 ただし、完全に現代の香調からは外れていますので、つけ方によっては 台湾の路上で焚かれる安いお香みたいに香るので注意。廟でけぶる安い香臭に陥るか、禁断の妖婦に転じるかは、あなた次第。

Nuit de Noel (1922)

創立者E・ダルトロフが華やかながらも静謐なクリスマスの夜にインスパイアされて創作した、オリエンタル・フローラルの名香です。日本名は「クリスマスの夜」で、ローズを基調に、ウッディとサクソン・モスがミステリアスなハーモニーを奏でます。第一次世界大戦のトラウマからの逃避が、1920年代の証人としてこの香りを生み出した、歴史の重みを背負った香りでもあります。現在パルファムとEDTの2濃度展開で、国内販売はありません。100年以上の歴史を持つグラン・パルファムの作品は、やはり真骨頂はパルファムで味わいたいものです。主張しすぎることのない絶対な存在感は、名香の名に恥じません。真冬でも、最初は殆ど香らないので、ずいぶんと静かな香りのように錯覚しますが、やがて染み出るように香り出し、全身が包み込まれます。

キャロンは、現行商品であればパルファムを大事にお使い頂きたいと感じるブランドですが、その中でも特にニュイ・ド・ノエル、ナルシス・ノアール、フルール・ド・ロカイユはかなり存在感が違いますので、パルファムがお奨めです。

Bellodgia (1927)

数多くの歴史的名香を輩出したキャロンですが、ベロージアは1927年発売の代表作で、創立者E・ダルトロフが北イタリアのベラージオ湖の美しさに感銘し、そこに咲くカーネーションをイメージに創作した名香です。当初アメリカ進出向けに調香され、その後世界展開した香りです。キャロン公式HPではシングルフローラルノートとされていますが、実に100種類以上の香料が調合されており、昨今のシアーでライトな香りとは違い、蜜の様な甘さの中にクローブ様のスパイシーさも携え、こっくりとした奥行きの深さが魅力です。

ベロージアは長らくパルファムとEDTの展開でしたが、10年くらい前にEDPが加わり、このEDPが結構良くて、蜜の様な甘さが一番鮮明に楽しめます。パルファムはどことなく渋みがあって、そこも魅力です。EDTは、パルファムが単純に薄くなった雰囲気なので、もしベロージアを初めて選ぶなら、EDPかパルファムをお奨めします。ちなみに、ベロージアはヴィンテージと現行品を比較してパルファムに限って言えば殆ど香調にかわりがないので、ヴィンテージの雰囲気を追体験したいときはパルファムをお奨めします。

ちなみにカネボウ時代は日本でも人気のあったベロージアですが、現在国内での取扱いはありません。また2013年春、現代の嗜好にチューンナップした過去のアーカイヴに新作を加えた全5種類の新シリーズ、ラ・コレクシオン(国内名・セレクション・キャロン)のひとつ、ピゥ・ベロージャは、オリジナルのベロージアに透明感たっぷりのグリーンが大量投入された感のある、いわば「グリーン・ベロージア」で、面影は残しているものの、ベロージアの真骨頂である蜜のようなこっくりとした甘さが肯定的に解釈されていないので、リニューアルではなく別物としてお考え下さい。

なお第4章「香水石鹸の世界」でも紹介しますが、ベロージアのバスライン代替品として、ロジェガレのカーネーション石鹸がぴったりなので、是非お試しください。

Fleurs de Rocaille (1933) 

※第1章で紹介。日本名「石の花」。戦前の清楚でスクエアなフローラル・アルデヒド系の代表作。

Muguet du Bonheur (1952)

フランスのグラン・パルファム、キャロンの1952年発売後今もなお愛されているすずらんのシングルノート、ミュゲ・ド・ボヌール(幸福のすずらん)です。

すずらんは、天然香料が採れないため、すずらんの合成香料を使うか、幾つもの天然香料を調香してすずらんの香りを再現するのですが、このミュゲ・ド・ボヌールは、昔のコティ(ミュゲ・ド・ボワ)、ゲラン(ミュゲ)と並び、すずらんの香りをヘリオトロープとライラックで際立たせた、天然香料で再現している数少ない香りです。現在パルファム、EDP、EDTの3濃度展開で、国内ではEDPのみ取扱いがあります。パルファムは、まろやかで優しいグリーン・フローラル、オードパルファムはしっかりとグリーンも甘みもあるメリハリの利いた香り立ち、オードトワレはほのかな爽やかさが香ります。

ミュゲドボヌールは、ことのほかヴィンテージの香りがよく、現行品でも美しいとは思いますが、若干の香り痩せは否めない一方で状態の良いヴィンテージのトワレなどは、思わず立ち止まってしまうほど甘さとさわやかさのバランスがよく、単なるライトなシングル・フローラルに終わらない構成のすばらしさを感じます。もし可能なら、30年ほど前のヴィンテージならば何とか探せると思いますので、一度ヴィンテージをお試し下さい。

Infini (1970) 

※第1章で紹介。これぞアルデヒド、キーンと体感温度の下がる超然とした香りは丸い香りの多いキャロンの中でも異彩を放っています。

Pour une Femme de Caron (1949/2001)

フランスのグラン・パルファム、キャロンから、2代目調香師M・モルセッティ調香で1949年に発売され、その後2001年に現キャロン専属調香師であるR・フレッスによりリニューアルされた、プール・ユヌ・ファムです。フランキンセンスやアンバー、ベンゾインをベースにおいたフローラル・シプレです。セルジュ・マンソー作のボトルイメージそのものの、女性らしいしっとりとした香りです。キャロンの中では現代的な香調に仕上がっていると思います。EDPとパルファムではあまり印象は変わりません。現在パルファムとEDPの2濃度展開で、国内発売はありません。

なぜユヌファムがパルファム・ラールのラインナップに入っているのか疑問なほど、クラシック感がありません。キャロンのコンテンポラリー系ではユヌファムとモンテーニュが「大柄系」ですが、モンテーニュが結構古典的なキャロントーンを保持しているのに対し、ユヌファムはキャロンだ、といわれなければ案外80年代〜90年代初頭の大柄系の王道をいっている部分が多く、若干の没個性を感じます。ボトルが素敵なだけに、もうちょっと繊細なイメージを描いている方も多いと思いますが、念のため。

Lady Caron (2000)

日本の代理店、フォルテが国内展開するにあたり、最初に大きく売り出したのがこのレディ・キャロンです。日本でも人気のあったリニューアル版フルールドロカイユ(1993)にシプレトーンを加え、一段階大人っぽくしたような、新ロカイユのお姉さん的存在ですが、目指すは自由の女神、夢は大きくアメリカン!なのがスクエアな香りにあまりマッチしていなくて方向性が定まらないのか、同じキャロンの諸先輩方の影でひっそり「自由、ばんざい」とつぶやいている気がします。現在パルファムとEDPの2濃度展開で、国内ではEDPのみ取り扱いがあります。

パルファムボトル(現行品)

プール・ユヌ・ファム パルファム