La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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DIVINE(1986)、DIVINE L'Eternel Feminin(2010)

DIVINE(1986)、DIVINE L'Eternel Feminin(2010)

1986年にフランスのディナールで開業したニッチフレグランスブランド、ディヴィーヌ(Parfums DIVINE)の、ブランド名を冠した初出の香り、ディヴィーヌは、ピーチとコリアンダーで幕を開け、ガーデニア、チュベローズ、メイローズを中心にオークモスがムスク、バニラ、スパイスと共に絶妙なさじ加減で引き締めている、フローラル・シプレの逸品です。調香はオーナーのイヴォン・ムシェルです。クラシックとモダンが共存する、正装感のあるタイムレスな香調は、そのままこのブランドのイメージにもつながります。長らくEDP1濃度展開でしたが、発売より24年の歳月を経て、満を持してディヴィーヌ・レテルネル・フェミナンの名にてパルファムが発売されました。これまでディヴィーヌの香りはレディス・メンズともにすべてEDP濃度でしたので、初のパルファムとなります。調香はEDPと同じくオーナー、ムシェル氏です。

「神が与えた麗しさ」に「永遠の女性らしさ」が重ねられたこのパルファムは、タイムレスな正装感のある品のよいフローラル・シプレで、基本的な骨格はEDPと同じですが、パルファムとEDPの違いは、もともと美しいと思っていた知的な女性が、間近に接したらもっと美しかったと驚き、なめらかな肌や柔らかい髪、穏やかな声まで感じられるような立体感にあります。EDPよりも長くミドルノートが続き、その分トップのピーチや中核のチュベローズ、ガーデニア、ローズなどのフローラルがくっきりとめりはり良く感じられます。ディヴィーヌの香りはオー・ディヴィーヌ(2009)以外はいずれも香り持ちが良いのですが、さすがはパルファム、朝数滴つけるだけで終日芳しく香ります。

めまぐるしく新作を出したりやたらな限定品を売るブランドが多い中、レテルネル・フェミナンのように、既存の香りを大事にし、初出の香りのパルファムを出す、ディヴィーヌの姿勢に感服です。

この時代、この香りに出会えた事をしみじみ悦びと感じる、不世出の逸品です。

 

ディヴィーヌ・レテルネル・フェミナン(パルファム)

 

追記 2021.7.27

レビュー当時、ディヴィーヌの調香は当時の公式サイトなどで、オーナーのイヴォン・ムシェルとなっていましたが、現在はリシャール・イバヌとなっていますので、訂正いたします。ディヴィーヌが発売された1980年代は、調香師に関する記述が乏しく、オーナー調香と思わせる記述が多かった(筆頭はエスティローダー。最近までエスティローダー作品は創業者エスティ・ローダー調香が定説だった)のですが、昨今はオーナー=クリエイター、という理解が進み、当時としては所謂ゴーストライター的存在だった調香師の名前がきちんと語られるようになり、またそれがスタンダードになってきた感があります。

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