La Parfumerie Tanu

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Black (2013)

 

Black(2013)

オランダはフローニンゲンの小さな香水ブランド、ピュアディスタンスの5作目となるブラックは、ブランドとしては初のユニセックスタイプのフレグランスで、いつもの17.5ml試験管タイプと60ml中型養毛剤タイプ、お徳用100ml大型養毛剤タイプのフルラインナップでの世界発売を12月3日に控え、海外の主要香水コミュニティサイトやブログでは秋口から早々と、しかも盛大にレビューが上がりました。パルファム濃度にこだわるブランドなので、今回も賦香率25%のパルファム1濃度展開で、ユニセックス系のパルファムは一般的に見てもそうありません。

その名の如く、ボトルは黒。毒物劇物危険物っぽい

旧4作はM(2010)をロジャ・ダヴ(英)、レディス3作すべてをアニー・ブザンティアン(米)が手がけましたが、今回のブラックで重鎮調香師、アントワーヌ・リー(仏)が加わったため、小さいながらも欧米3拠点の調香師が手がける国際的なブランドに成長しました。A・リーといえば一般的にはC・クラインのコントラディクション(1997)をはじめグッチ、ケンゾー、ダビドフが輩出したヒット作のドジョウ物、近年ではコムデギャルソンやニッチ系フレグランスも手広く手がけるヒットメーカーですが、LPT的にはなんと言っても知的エロの殿堂、エタリーブル・ドランジュのトムオブフィンランド(2008)やセレクシオン・マニフィーク(2007)などの主要作を数多く調香した事で注目です(TOF以降、近作には関わっていないですが)。 

 ブラックのイメージ画。発光する黒

ブラックを製作するにあたり、PD社長・J・E・フォス氏からA・リー氏へのリクエストは「まとう人に影の如く寄り添い、囁くように艶めき香る、エレガントでミステリアスなパルファム」だったそうで、フォス氏の志をよしとしたリー氏が作り上げたブラックは、一切香調が開示されていません。「心に描け、嗅げ、感じろ。分析するな」昨今の香水は、やれ原料が何、天然香料がどう、産地がどこ等なんでも挙げ連ね、純粋に香りを楽しむには雑音となりかねないデータベース的情報が多すぎる。ならば、香調を開示せず、体感のみを最強の判断材料として欲しい、と燃えよドラゴンの「考えるな。感じろ」ばりに送り出したのですが、もともと原料云々に詳しくない私にとっては非開示上等、いつもどおり体感でのみご紹介させていただきます。よって以後記載する原料名はあくまで憶測で、そんなものひとつも使っていないかもしれないし、使っているかもしれません。とにかく、主旨を尊重して分析は野暮といたしましょう。

 
念写に、男が映ってる・・・

ブラックの第一印象はMを上回る男臭さで、フゼア系やラベンダー系男性香水の立ち上がりにこ、これは手強い・・・と思いきや、じょじょにサンダルウッドやシダーウッド、ベチバーといった甘さのないオリエンタルウッディが滑らかなレザー、若干の果皮とともに顔を出し、それが何ともたおやかな女性の色艶を髣髴とさせて、まるで端正な男性と壮麗な女性が、窓外の街路灯だけが差し込む部屋で、柔らかくすべすべしたレザーのソファに無言で横たわり、衣擦れだけが聞こえてくる、そんな静謐な時を感じます。男女共用、ユニセックスというよりは男女複合、ポリセックスとでもいうべきでしょうか。パルファム濃度のよさを活かし、ブラックもアイ(2007)同様、超接近戦仕様で拡散はごく抑え目に処方されているとの事ですが、勤務先に何度かつけていったところ、体温や息遣いで突如拡散し、その広がりが非常に女性らしく、上品で美しい、今日の香りはとてもいい、えええ香りや〜、とまたもや香水馴れしていない同僚からセクシー成仏者続出で、体感的には結構男臭いのに、女性がつければきちんと、しかも非常に女性らしく香るのと、不思議と甘さを殆ど感じない時とぐっと円やかな甘さに包まれる時と、日によって甘さの振れ幅が大きいのも中々にミステリアスです。

 念写に、誰かが映ってる・・・

路線としてはMと同類項なのですが、ブラックには「ダンディ、伊達者」の印象がない一方で、Mには「ミステリアス」の印象があまりありません。香木系が多めのオリエンタルウッディなので、和の美にも通じるところがあり、そこが我々日本人にはある種親近感と寛ぎを呼ぶのかもしれません。問答無用で子供御免、明らかに成人指定の香りで、ここを寛ぎと感じるにはつける方の経験値も要するところですが、個人的にはオパルドゥ(2012)に続き、ピュアディスタンスの中からボトルで欲しいと思ったひとつです。秋冬に向けて、ウルトラディープなオリエンタルウッディのパルファムをひとつ、とお探しの方にはうってつけの逸品です。

 

やっぱ、しめは社長に出てもらいましょう。来年は何にしようかな〜ん