La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Tableau de parfums - Miriam (2011)

昨秋2011年10月に発売となったタブロー・ド・パルファン(香りの絵画)は、
アメリカはテネシーを拠点とするブライアン・ペラ主宰のクリエイト集団、
イヴリン・アヴェニューが、架空の女性をモデルに映画を制作し、その映画の
ヒロインをモチーフにした香水をイヴイン・アヴェニューのレギュラーメンバーでも
あるチューリッヒの鬼才・アンディ・タウアー氏が調香したオードパルファムのボトルを、
映画のDVD、ヒロインをフィーチャーしたブックレットと共に収めたボックスセットです。

タブロー・ド・パルファンは3部作となっており、ベースとなる映画「ウォマンズ・
ピクチャー」に登場する3人の女性から、第一弾である「ミリアム」に続き、
本年10月には第2弾の「ロレッタ」、続く2013年には第3弾の「イングリッド」が
予定されており、1930年代から50年代の女性をイメージして制作されています。
販売は、イヴリン・アヴェニューの直販サイト(アメリカのみ対応)か、ラッキーセント
(世界対応)の2拠点が中心の様で、ミリアムについては50mlEDPが収められた3点
ボックスセットがUS160ドルと結構な価格で、7mlのパーススプレィでもUS40ドルと
中々の強気価格です。しかも、次作以降は購買者出資型資金集めも行っており、幾ら
払うとDVD、これだけ払うと香水付、ここまで払うとエキストラで出演(!!)という、
楽屋落ち甚だしい、付き合いきれない囲い込みの世界に突入しています。

で、肝心の香りですが、各地でフレンチスタイルの王道を行くクラシック感満載の
濃厚フローラル、と絶賛ばかりなので、どんなもんかと思いきや、どこまでもシャネル5番や
ジョイの追随でしかない、戦前フローラルの権化そのものの完全なるオマージュで、
問題は、それ以上の何かが見つからない所です。アルデヒドがないだけでローズ・ジャスミン・
バイオレット、どーん!と香り、しいて言えばラストノートのムスクが今の流行っぽいと
いうだけで、これなら、何も崇高な参加型芸術にお金を払ってまで付き合わなくても、
単純に香水だけ欲しいのであれば160ドル握りしめて世界各地にあるシャネルカウンターに
行って元祖・権化・先祖である5番のパルファムを買って最新のサンプルでも貰う方が、
歴史的名香という無形文化財を手にするという意味でもお奨めです。
この手のニッチ・フレグランスメーカーが必ず謳い文句にする「希少な原料を惜しみなく使い、
伝統の製法で丁寧に作り…」という決め台詞をそこここに見かけ、確かに完成度も高く
良い材料も使っているのは体感できるのですが、無駄にスノッブなアイテムが付随してくる所に、
何故か女一匹、無性に腹を立てている自分が腹立たしいです。
「私の作品はいずれも、女性のポートレートである」byジャン・ポール・ゲラン、など
引用もいやらしいです。

そんなに良い物なら一般市場で香水だけで勝負しろ、本当に良い香りは、香りから女性が
姿を現すんだ、と、いい香りを嗅いで、こんなに頭に来たのは初めてです。繰り返しますが
香水は、香水だけで勝負してほしいです。

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