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1889 Moulin Rouge (2010)

バーレスク後篇に登場するのは、イストワール・ドゥ・パルファンの近作で
19世紀末のパリ・デカダンを代表するキャバレー、ムーランルージュへの
オマージュである1889ムーランルージュです。イストワール・ドゥ・パルファン
の製品は、公式オンラインショップで購入するのが一番手軽ですが、日本では、
フレデリック・マルやエキセントリック・モレキュールなどを取り扱うアイビシ
トレーディングが輸入代理店で、トゥモローランド系列のセレクトショップ
エディション丸の内店でも入手可能です。オンラインショップでは60mlと
120mlの2サイズあり、それぞれ約8,500円/14,000円(120mlサイズは送料
無料)です。バスラインはありませんが、キャンドルがあります。

1889年創業、現在もパリを代表する観光スポットで「赤い風車」を意味する
ムーランルージュ。19世紀末、ヴェルレーヌゴッホロートレック等ベル・
エポックを代表する文化人が通いつめ、名物フレンチカンカンを観ながら禁断の酒、
アブサンに酔いしれ身を滅ぼす…といった鉄板のイメージが盛り沢山に織り込まれた
1889ムーランルージュは、きしむようにパウダリックなアイリスと、アブサン
主軸になっており、そこにシナモンなどのスパイスにパチュリローズとムスクが
濃厚に重なってふんふんと香る渋めのパウダリー・フローラルとなっていますが、
アイリスとアブサンの基本軸から、次々にシロップ香や鮮やかなローズ、爽やかな
タンジェリン、毛皮の様なレザー香など、表情の違うアクセントがぽんぽんと顔を
出し、星屑の様に去来する喧噪と華やかな舞台の陰影が大変よく描かれています。
誰かが主役というイメージではなく、ひとりひとりの顔は見えず、沢山の思惑が
蠢いている、そんな空間のざわめきを感じる部分は、これが特定のバーレスク
ダンサーにスポットライトを当てた、前編のディタ・フォン・ティーズとの大きな
違いです。ラストはしっとりとしたムスクローズに落ち着きます。
EDP1濃度ですが、香り立ちが結構派手なのと、とにかく色々な香りが飛び出して
騒がしい雑踏に放り込まれたような錯覚に陥る事が多いので、つけて寛げるような
類のパウダリー・フローラルではないため、お好みが別れそうですが、アブサン
効果なのか、物凄くいい香りという感じでもないのに今日も、また今日もつけたく
なる所が、薬物の習慣性に通じるものがあります。

ちなみにアブサンは、幻覚作用などが問題となり、一時発禁となりましたが
成分を見直して現在も製造販売されている薬草アブサン(ニガヨモギ)を使用した
ハーブ系リキュールで、アニスを使用したアブサンの代用酒も作られています。
ペルノー社の正調アブサンは入手困難なので他のメーカーのアブサンを入手した所、
アニスの香りしかせず、1889ムーランルージュに漂うアンニュイな薬臭さは
ありませんでした。たいへん強いお酒なので、基本的に水で割って飲みますが、
薄緑色のアブサンが水を加えるとひゅっと白濁するのも妙にデカダンです。