La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Calypso(1956/2010)

1930年代から50年代初頭にかけて活躍し、ジバンシー、ディオール、バルマンなど
錚々たるクチュリエを育てたデザイナー、ロベール・ピゲが1951年に廃業、1953年に
逝去した後も、パヒューマリーとして存続する中1956年に発売されたカリプソが、
ピゲの復刻ではおなじみの調香師、オーレリアン・ギシャールの手により2010年に
再発されました。

智将オデュッセウスを7年間も愛の虜として閉じ込めた、地中海の洞窟に棲む美しき海の妖精、
カリプソの名を持つこの香りは、オリジナル発売当時はソフト・フローラルの分類で
紹介されていましたが、今回の復刻版もまさにマシュマロのように柔らかなパウダリー・
フローラルで、アルデヒドの様なリフト感も感じる一方で、パチュリやスエードなどの影が
うっすらと下地としてあるため、若干突き放した感もあり、手放しに可愛らしい香りには
なっていません。同じくピゲのビザや、ボンドNo.9のチャイナタウンを髣髴する、
A・ギシャール氏の調香らしい、フルーティなトップのゼラニウムやマンダリンがすぐに過ぎると、
ふわふわとローズとアイリスが前面に出て、小声でささやき続けます。オリエンタル・フローラルと
紹介されている時もありますが、オリエンタル感は全くありません。つける量によっては、
凄く薄くてローファットなオンブルローズのように感じる時もあります。冬場厚着をしたら、
殆ど分からない位軽いので、春夏向けかもしれません。

ピゲの復刻の中ではだんとつに軽い香りで、EDPは持続も短いので、復刻版のパルファムが
どのように違うか試してみたい所です。

【追記】

復刻版のパルファムですが、EDPとは迫力が段違いで、ベースのパチュリやスエードがボンデージの様に
身体を締め上げるような窒息感のある、クールなパウダリーフローラルで、粉もの好きの私でも
少々香り酔いを起こしました。猛烈な持続も特筆すべきで、脱いだ後の衣服や洗濯をした後の下着にも
残り香が残る所といい、粉&革のマッチングといい、エタリーブルドランジュのトムオブフィンランドを
髣髴とします。EDPだとあんなに小声だったのに、あな恐ろしや。一体オリジナルはどんな香りだったのか、
確実にこれはA・ギシャール氏が捧げたオマージュだと思います。他のピゲの作品と同様、EDPと
比較するとパルファムの方が完成度も破壊力も増し、相対的な満足度は高いので、可能ならば
パルファムをお試しになる事をお奨めします。