La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Calandre (1969)

パコラバンヌより1969年に発売された初出の香り、カランドルです。
調香はその2年後にジャック・ポルジュとの共作でリヴ・ゴーシュを作った
ミシェル・イーです。彼は戦後〜高度成長期の明るく必ずグリーンが
主張するフローラル・アルデヒド/シプレ系の大家で、ニナ・リッチでは
フィーユ・ディブ(1952)やファルーシュ(1974)、サンローランではY(1964)や
リヴ・ゴーシュ(1971)、そしてP・バルマンではイヴォワール(1979)と、
いずれも当時大ヒットして日本でも人気を博したものばかりなので、
中年以降のかたであれば、日本にいても必ずやどこかですれ違っている
香りを生み出した調香師といえましょう。

発売当時は、それはもう「カッコいい香り」の代名詞のように紹介されて
いましたが、今香るとそれでも身持ちの良い、控えめな香りの部類だと思います。
当時としては斬新なグリーン・フローラル・アルデヒドのすっきりと
した中にどこか熱源反応を感じるような温かみを併せ持つ、クラシック
かつスタイリッシュな香りで、20世紀末に一旦廃盤となり、2002年に
同じく廃盤となっていたメタルと同時再発されましたが、昨年初めに
惜しくも再び廃盤になったようで、海外ではすでに流通量が減り、
入手が困難になってきています。

一方でカランドルは、同じ作者のリヴ・ゴーシュと酷似しているとよく
話題になる香りでもありますが、同じEDT濃度をつけ比べてみると、
カランドルの方が若干造作が粗く、リヴ・ゴーシュの方がより精製されて
シャープに香ります。いうなれば、同じ砂糖なら白糖とグラニュー糖、
塩なら粗塩と精製塩位の違いですが、カランドルに感じる謎の熱源反応は
リヴ・ゴーシュにはなく、逆にきーんと長持ちする一方でカランドルは
まろやかに肌になじみながら薄れていきます。この2年の差で、カランドルが
自信を付けてより意見を言うようになったのがリヴ・ゴーシュで、どちらが
お好みかは体感による、と言ったところでしょうか。いずれも、高度成長期の
アルデヒド好きにはたまりません。個人的には、カランドルの方が、一生懸命
頑張っているけれど、ちょっと脇に隙があって好きかな、というところです。

こうした香りをどんどん廃盤にして、パコラバンヌが安っぽいイメージの
大衆香水ばかり出すようになって久しいですが、かつてはカランドル、
メタル、ラニュイ、プールオム(唯一現行品)という大人の香り四天王を
輩出したブランドですので、この4つだけは永久定番にしてほしいと願います。