La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


Vepres Siciliennes (2009)

老舗コニャック、フラパンの香りを幾つか手掛けているジャンヌ-マリー・フォジールが
MDCIのために手掛けた、ヴェープル・シシリエンヌです。1282年にシチリアで起こった
住民暴動と虐殺事件であり、またこの事件を題材にした同名のヴェルディによるオペラ、
シチリアの晩祷(ばんとう)」の名をもつこの香りは、そんな血なまぐさい名前など
関係ないかのように、明るく瑞々しいピーチフルーティ・シプレです。

個人的にはロベール・ピゲのビザからベースで睨みをきかせているパチュリやモスが
控えめになって、もっと眩しくなった感じという印象がありますが、あれ…親しみやすく
優しいピーチ系シプレ、って、MDCIの紹介ではこれで3度目ですね。何だか振出しに戻って
しまった感じですが、確かにクルクジャン3部作のうち「夜明けの誓い」「後宮からの逃走
(シワの薔薇はムスクローズ)の延長線の様です。化粧品で言うなら、明るめ-暗めと赤み-黄み
というファンデーションのカラーチャートのように、甘味-酸味/明るめ-暗めという直交座標系の
上下左右にこの3つが分布しています。たぶん、この軽めのピーチシプレというのがMDCIの
十八番で、主宰のクロード・マーシャル氏のレディス香水におけるお好みなのだと思うのですが、
キャロンで言えばキャロントーン、ゲランで言えばゲルリナーデのようなベースノートではなく
全体の印象があまり大差ない(もしかしたら欧米など空気感の違う土地で香れば、それぞれ別の
香り立ちかもしれませんが)のは大枚はたく甲斐がないので、毎度毎度同じような香りを出して
こられても、結局は最初のクルクジャン三部作に評価が集まり、やっぱ高いね、頭いらないね、
どっとはらい、で終わりなのではないかと、そろそろ方向性を考えた方がよさそう、と他人事
ながら心配しています。

ちなみにピーチシプレ3部作(勝手に命名)の中では、一番フルーティで快活な感じなのが
シチリアの晩祷で、一番儚げで繊細なのが夜明けの誓い、若干アンニュイで微妙な謎を秘めて
いるのが後宮からの逃走、という印象です。どれも仕立ての良さは十分に感じられますが、
シチリアの晩祷が一番明るいのは舞台がシチリアだからでしょうか、でもそうだとしたら
全然タイトルの趣旨と合致しません。公式ウェブサイトでは、シチリアの光と影を見事に表し…と
ありますが、光が強い割にはあまり影が出ていないのも快活に感じる理由です。

次回はいよいよ最新作、「美しきエレーナ」の登場です。

 

 ピーチシプレ3部作ってか?