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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Shem-el-Nessim(1906/2009)

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シェメルネッシム EDP 50ml

1835年に創業したイギリスで最も古い香水店のひとつであるグロスミス社は、1851年第1回ロンドン万博でイギリスの出店企業としては唯一の受賞者となったり、20世紀前半(1901-1925)には英国王室御用達を賜わるなど栄華を極めながらも戦後を境に零落、権利が転々とする中、21世紀に入り末裔サイモン・ブルック氏の手により30年ぶりに買い戻され、家督のフォーミュラからグロスミスを代表する香りを復刻する運びとなりました。

ここまで書くと、テオ・カバネルと類似点が多いのですが、大きな違いは、テオ・カバネルが現代的な解釈を施しているのに対し、グロスミスはあくまで家督のレシピに忠実に、誠実に復刻している点です。監修は、先程ウビガンのフジェール・ロワイヤルを復刻監修したロジャ・ダヴ氏で、仏香料会社、ロベルテを率いて復刻する際「残されたわが人生すべてを捧げる」とブルック氏は所有する不動産などすべて売却のもと、私財をつぎ込みました。アンバーグリス、ムスクなどさすがに入手不可能な動物性香料は合成香料に頼らざるを得なかったようですが、それ以外は現在手に入る最高級の天然香料を中心に用いたそうです。

復刻された3つの香りは

・Hasu-no-Hana(1888)
・Phul-Nana(1891)
・Shem-el-Nessim(1906)

の3種で、このうち20世紀に発売されたシェメルネッシムを紹介します。

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シェメルネッシム パルファム 10ml

シェメルネッシムはエジプトで祝われるアラビアの春祭りの意で、香りとしてはそれ程中近東を強く髣髴する香りではなく、女性美が謳歌されたエドワード調のスタイルを汲む、どっしりと温かみのあるまろやかなパウダリー・フローラルで、ふんだんに使われたオリスの中でも最高級にして対価は金塊の3倍といわれるフィレンツェ産オリスバターの恩恵を強く感じる事ができます。

公式サイトではロリガン様の香りと表記されていますが、ロリガンというよりはアプレロンデのパルファムが現存したらこんな雰囲気ではないか、とも思われます。
現行のアプレロンデが冷涼な淡い藤色のはかなげな女性のイメージだとしたら、シェメルネッシムはうららかな春の陽光のもと、皆と明るく語らいながら美味しい物に舌鼓を打っているような、包容力のあるたっぷりとしたイメージで、のんびりとした明るさを感じます。オードパルファムとパルファムがありますが、EDPでも一日中優しくふわふわと心地よく香りが持つので、パルファムへの期待は嫌がおうにも高まります。3点の中では一番現代にも通じるリアリティのある、かつ女性らしい香りで、つけやすさとしては一番です。

残念ながら、販路がかなり限られている事と、おいそれと手に出来る価格ではないため、中々ボトルをこの目で崇める機会がありませんが、幸い海外の高級香水通販店で小分けも対応していますので、一度はお試しいただきたい香りです。