La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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L'Heure Attendue(1946)

コロニーの2年後、1940年にデリスが発売されましたが、戦況厳しくなる中パトウも新作の発売は
終戦まで待たざるを得ませんでした。フランスはドイツからの解放後終戦を迎え、1946年に戦後初の
作品として発売した香りには「待ちわびた時」という、重みのある名がつけられました。

香りとしては、甘くじんわりと香るいたって穏かなオリエンタルよりのスイート・フローラルで、
ライラックの青さとイランイランの甘さにコレクシオンのフローラル系全般に通じるオポポナックスの
ベースが支えとなって肌に馴染みます。開放された自由とは、馬鹿騒ぎのような高揚感ではなく、
じんわりと温かみを感じる花々の香り、という解釈が「待ちわびた時」の真意を物語っています。
アデュー・サジェスやノルマンディーにも雰囲気が似ていますが、ルール・アタンデューが一番甘く、
深く穏かで年齢層が高い気がします。

ルール・アタンデューは、パトウのマ・コレクシオンを収集するきっかけとなった香りで、
知人よりオリジナル版のパルファムを頂いた事に端を発します。下さった方は80前の英国人女性で、
若かりし頃国際線の客室乗務員をしていて、結構もてたので(本人談)それは色々な殿方から香水を
プレゼントされたそうですが、ご本人は使いつけの香りがあって、50年以上使わず放置していたとの事。
イギリスの方なので、放置コレクションの大半は当時イギリスで人気のあったランテリックのツイード
その一連、最近のものではディオールのドルチェ・ヴィータもありましたが、その中にぽろっとランコム
フレシェ・ドール(1957)やこのルール・アタンデューのオリジナル版パルファムもあり(なんと勿体無い・・・
プレゼントした方も浮ばれませんね)、おばあちゃんとしては古いし使わないしわかんないし、もうどうでも
いい訳で、どれでも好きなのをくれるというので、すかさずルール・アタンデューを頂戴したという次第です。

オリジナル版は、コレクシオン版よりも若干フルーティで、ジャスミンの生臭さやローズのほのかな
酸味もきちんと感じ取る事ができます。オリジナル版、コレクシオン版ともに香り立ちは穏かで、
オリエンタル感も控えめ、どちらもそれほど持続はしませんので、通年使える香りだと思います。

この後、戦後パトウの大ヒットとなったキャリーヌ(1964)が続き、12種のコレクシオン(+番外編2種)の
役者が揃います。改めて専属調香師、ジャン・ケルレオ氏の、自らもミルやスブリームなど現在も現行
発売されている名香を生み出しながら、自社の過去の香りに敬意を表する姿勢には、
ただただ感服の一言しかありません。ケルレオ氏が創立した香水保存館、オスモテックも
一生に一度は訪れてみたいと夢を馳せ、これにてパトウのマ・コレクシオンのレビューは
幕引きといたします。


 
トップ:スズラン、ゼラニウムライラック
ミドル:イランイラン、ジャスミン、ローズ、オポポナックス
ベース:マイソールサンダルウッド、バニラ、パチュリ

コレクシオン版EDT
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