La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Cocktail(1930)

世界大恐慌が起こった翌年の1930年、ジャン・パトウが不況を嘲うかのように輩出したのが、
後世に残る名香、ジョイとこのカクテルです。サンフロランタン通りに面するパトウのメゾン
には、ドレスを注文する女性に付き合いでやってきた手持無沙汰の男性が、待つのも苦にならない
よう採寸をしている間カクテルやちょっとした会話が楽しめるバーが併設されていました。
カクテルはそのバーで振舞われるカクテルをイメージし、コレクシオンで再発されたオリジナルの
カクテルだけでなく、カクテル・ドライ、カクテル・スウィート、カクテル・ビタースウィートの
計4種類も作られました。

カクテルはコティのシプレを始祖とするシプレノートに忠実な、シトラス-ジャスミン/ローズ-
オークモスのシンプルなコンビで、さわやかなグリーンシトラスから始まり、すぐにオークモスや
フローラルが顔を出して肌に馴染みます。甘さはさほどないのですがとてもクリーミィで、どういう
わけか昔のニベアが物凄くいい香りになったような、女性らしい柔和なまろやかさに肩の力が抜けて
しまいます。個人的に、オリジナルのニベアやオロナインの香りが好きなので、妙な安心感がくせに
なります。肩肘張らない香りが人気を博したのか、コレクシオンでもフルボトルは遂にお目にかかれず
かろうじてミニチュアボトルを数本入手できたに留まりました。

余談ですが、ニベアやオロナインの香りは結構クラシック香水に通じるものがあると思います。
嫌いな方も多いみたいですし、真っ先に「おばあちゃんの匂い」「古臭い」といわれるのは
ニベアもクラシック香水も同じ憂き目ですが、そもそもニベアやオロナインは市場の最大公約数を
ターゲットに置いた大衆向け商品ですので、発売時誰からも嫌われない香調を採用したはずです。
ニベアの発売は1911年、オロナインは1953年の発売で、昔からあまり香りが変わっていない所を見ると、
この二つの香りにクラシック香水好きが惹かれるのも道理であると思います。ちなみに自分で使用して
いて「物凄くいい香りになった」オロナインと感じたのはキャロンのアンフィニ(パルファム)、
ニベアと感じたのは上記の通りカクテルで、その中間地点にランコムのクリマ(EDP)があります。
私のノスタルジーはこの辺にあるのだと、この3点をつける度に思い知ります。


トップ:グリーンノート、ベルガモットシトラス
ミドル:ジャスミン、ローズ
ベース:オークモス