カルデアに続き発売された「至福の瞬間」の意であるモマン・スプレームは、
コレクシオン中最も特異な展開をする「一応」フローラルノートです。
まず、つけた瞬間はさわやかさが爆発するようなしゃきっとしたシトラスの
アクセントがきいたラベンダーとゼラニウムのスパークに驚きますが、本当に
驚くのはここではありません。このマニッシュなトップノートは5分もしないうちに
どこかへ消えてしまい、代わりに顔を出すのが何ともやるせないアンニュイな
パウダリーフローラルへと豹変してしまいます。
調香にはありませんがヘリオトロープやオリスが日陰の薄ら寒さを感じさせます。
まるではつらつとした青年の皮を剥いだら蒼白でけだるい女性だった、みたいな
奇妙な二面性が人気を呼んだのか、コレクシオンの中でも相当の入手困難品です。
香り持ちは弱く、朝つけても昼まで持ちません。すべての勢いをトップのラベン
ダーとゼラニウムが奪っています。「至福の瞬間」とはパリが最も絢爛であった
当時の様子を指すといわれますが、まさしくトップノートを謳歌できる5分間こそが
至福の瞬間なのかもしれません。
モマン・スプレームの発売後、世界は未曾有の大恐慌へと突入します。
しかしパトウはどん底の景気を逆手にとるかのように「世界で最も高い香水」として
次なる至福の瞬間を待ちわびる富裕層めがけ、ジョイを発売するのです。やりますね。
トップ:ラベンダー、ゼラニウム、クローブ、ベルガモット
ミドル:ジャスミン、ローズ
ベース:アンバー、スパイス
《補足》香水ブログ、Perfume shrineによる調香:
bergamot, lemon, neroli, mandarin, lavender,
May rose, clove, ylang, lilac, jonquil, orris, vanilla,
sandal, musk, honey,heliotrope, civet, moss, and benzoin.