La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Encre Noire (2006)

A Gentleman takes Polaroids chapter ten : Black Gentleman
 
立ち上がり:ベチバー&微妙に柑橘系の香りですが甘さが無くていい感じ。これはいい気分になります。
 
昼:印象変わらず いい感じで落ち着いてきてます
 
15時位:最初の印象とほとんど変わらない香りなのも珍しい 消えてはいませんが大分微かになってきました
 
夕方:微光ですが最初の良い印象のままです。これは常用できますね。
 
ポラロイドに映ったのは:スーツを着る仕事をしていてたらこうなっていたであろう自分(50近くでもジーンズにTシャツで仕事いってるんで・・・)

 

 
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アンクル・ノワール EDT100ml この他レディスやアンタンス、スポーツ版もあるが話題の逸品はこのオリジナル版
 
Tanu's Tip :
 
春爛漫、百花繚乱の4月は、陽射しの強さが増してくる一方で、光に晒された物体が落とすその影も濃く、深くなる時期でもあります。輝く光が眩しければ眩しいほど影は黒く、黒く…。世の中、眩しい光を浴びて輝いている人ばかりではありません。輝く人が落とす真っ暗な影にすっぽり包まれて、その姿すら見えない人が大勢いて、残念ながらこの世界は均衡が取れているのだ…。今月は、そんな斜めな事ばかり考えているかもしれない我らがジェントルマンが選ぶ、名前に「黒」を冠した逸品3点を「黒いジェントルマン」としてご紹介します。   
 
ラリックは、その後の限定ボトルの中身として延々と売り繋がれていますが、果たしてそれは中身欲しさではなく、香水瓶が欲しくて買うお客がほとんどと言っても過言ではないと思いますし、創業より25年間に発売された香りも、大概は「瓶は一流、中身は二流」的扱いで、私自身、ずっしり重く美しいフォルムの瓶からスプレィして「う、…」と消沈し、右から左に手放した事が幾度もありましたが、そんなラリックのフレグランス中、最も異彩を放ち、かつ評価が高かったのがこのメンズ・フレグランス、アンクル・ノワールではないでしょうか。上記の通り、ジェントルマンも大絶賛で、昨年ご紹介したアンテウスに続き、レビュー終了後めでたく彼の私物に昇格しました。そして、ポラロイドには「別の人生を歩んでいたら、この香りをつけた自分がそこに居た」転職のコマーシャルみたいなカットが写りました。まあ、いつもヨレヨレのロックTシャツにジーンズで毎日頑張る働き盛り後半のジェントルマンにだって、とてもお似合いですけどね。
 
資生堂のZEN(第2世代)やディータ・フォン・ティースなどアフォーダブル系の秀作も多い、メジャー系の大御所ナタリー・ローソンが手がけた「黒インク」の名を持つこの極めて淡麗辛口な香りは、発売から10余年経った今でも全く古さを感じさせず、むしろ「この香りが古臭く感じるのは、いつだろう」と思うほど時間に支配されていません。基本的にはビターなベルガモット系のバーストに始まる、ベチバーとサイプレス過積載&日本人には懐かしい「硯ですった墨の香り」のシンプルな構成で、お情け程度にベースのムスクがありますが、周りの人には肌の上の甘さまで届かないと思います。
 
メンズフレグランスって、案外ベースが甘重いから苦手でつけられない、という日本人男性が多く、そこを巧く回避した香りで経験値を上げ、じわじわと守備範囲を拡げているジェントルマンのようなポテンシャルの高い男性は少なからずここ日本にも居ると思うので、フレグランス初心者の男性がそばにいたら、ここはひとつシトラス系なら安心、柑橘系なら嫌いな人いないと無難にアドバイスせず、こういうドライで脇の下に涼風の吹くような、それでいて樹木の静謐な雄々しさもある、アンクル・ノワールのような香りを「これ、いいね」と言えるくらいには、周りの方が責任を持って育ててあげて欲しいです。

ちなみに、日本ではこちらが公式オンラインストアのようですが、本業は食器やクリスタルガラスの輸入代理店なので、フレグランスの総代理店も同じ会社かどうかは勉強不足でわかりません。ラリックのフレグランスは並行輸入品でアフォーダブルにガンガン入ってきています。

shop.gk-japan.com

 
 
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10年前から昨今のメゾンフレグランス的ボトルの先をいっていたアンクル・ノワール 蓋は天然木

LPT Scent of the Month : April 2017

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2017年1月より毎月1本、店主タヌが選ぶおすすめの香りを、キャバレーLPTでお馴染みの図鑑図書館、Book cafe bar Fumikuraの店頭にてディスプレィしていただいております。サンプルムエットによる持ち帰りOKの試香スタイルが好評で、実際店主タヌ来店の際、目の前でムエットをお持ち帰りになる方と遭遇する場面も多々ありました。香りの解説はQRコードにて当LPTブログへ。スマホでブログの解説を読みながらムエットを試香し、美味しいお飲み物の合間に「えええ~香りや~~~」と恍惚のひと時をお過ごしください。

春爛漫の第4回は、期待も不安も膨らむ4月にふさわしく、LPTではお馴染みの、そして今月いよいよスタッフ来日、キャバレーLPT共同開催のピュアディスタンスから、ブランドのベストセラーであるホワイトをご紹介。今年で10周年を迎えるピュアディスタンスが2015年に発売してから、爆発的に売れているこのホワイトのコンセプトは「つけた瞬間、幸せを感じる香り」。世の中、ネガティヴな事ばかり起きる。だったらせめて、この香りに包まれている時くらい、幸福感に浸ってほしい、というヤン・エワルト・フォス社長の熱い思いで生まれたホワイトは、ローズムスクにサンダルウッドやアイリスといった、極めて王道の美的フローラルムスクですが、何かが違う。それは賦香率38%の圧倒的な濃度、そして作り手であるブランドの想いです。実際ヨーロッパでは、そのイメージカラーからブライダルに用いられることが多く、花嫁さんがウェディングフレグランスに選び、出席した女性のお友達がホワイトの香りにノックアウトされて我先にと次々に買っていくとか。実際、出荷してもしても店頭の棚が空っぽになる程売れ行き爆裂な取引店もあるそうで、この即身成仏的パワーを是非店頭のムエットで体感してください!!

詳細は、下記リンク(Fumikuraウェブサイト)およびLPTでの紹介記事をどうぞ。都内近郊にお住まいの方、LPTの魅力を直に感じていただける月替わり常設企画を、大人の図鑑図書館・Fumikuraにお運びの上、おいしいお飲み物やお食事、素敵な蔵書と共にお楽しみください。

今月の香り no.04「ピュアディスタンス ホワイト」 - fumikura

 

 

Moustache (1949)

立ち上がり:なんか酢のような酸っぱい匂いがするんですが。もしかして劣化してる?ベルガモットの香りがその後を追うように香ってきます
 
昼:酸っぱい匂いなくなりようやくまともな香水の香りだ。ローズ系の香りが強まってきています。
 
15時位:バニラっぽい香りに変わってきた。時間を経るごとにどんどん香りが変貌してきます。
 
夕方:最後の方はムスクっぽい。HABIT ROUGE程ではないけど今回の3本は私ごときで対抗できる香りではないな・・・負けそう・・
 
ポラロイドに映ったのは:軽い気持ちで昼飯食べようと思い入ったら客がほぼ全員女!あまつさえ量も少ない「プレート」なるしゃらくせえ名前の飯を食わせる店に入ってしまった時の敗北感。
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Tanu's Tip : 
 
ムスタッシュは「ムッシュ、ムッシュ、ジェントルマン」の回でもご紹介した、ロシャス初のメンズフレグランスで、調香はロシャスにおいてはファムを作り同社の成長に大いなる貢献をしたエドモン・ルドニツカとその妻、テレーズ・ルドニツカの共作で、とうの昔に廃番ですが、販売当時は結構売れたのか、現在でも箱のてっぺんが日焼けして退色した、バーコード印刷のない(≒80年代後半までの流通品)スーパーデッドストックが時折亡霊のように海外香水ディスカウンターの販売リストに登場しています。著名人が手掛けた名香ならば、箱が日焼けしていても新品なら手に入れたいのが人情というもの、新品だから、新品なんだから…と入手したものの、グレーの部分がペパーミントグリーンに変色した、その箱の焼けっぷりにビビりながらも、ジェントルマンは果敢にレビューを決行。ファーストコンタクトで「す、酸っぱい…」とひるみながらも、きちんと経時変化を記録してくれました。
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この酸っぱいのは、レモンとレモンバーベナがベルガモットと共にガツンと立ち上がってくるためで、通常ヴィンテージだとこのシトラス部分がやけて飛んでいる事が多いのですが、さすがディスカウンターとはいえ新品扱いの強気で販売しているだけあって、酸っぱいのは劣化だけではなく、ムスタッシュのトップノートの個性だと思われます。ジェントルマンが酸敗臭と勘違いしたトップノートが過ぎ去ると、ローズ・ジャスミン・カーネーションといった王道フローラルノートが顔を出し、その後バニラの幕、ムスクの幕…とパウダリーに変化するという、クラシック香水の序破急がはっきりとしたノート展開があります。個人的に、ルドニツカ作のシトラスアロマティックシプレ系(オーソバージュ、ディオレラなど)が少々苦手で、というのもどこかに生肉のような生臭さを微かに感じるからなのですが、このムスタッシュも気持ちなんとなく生臭い。それにレモンバーベナやラベンダー、プチグレンなどのハーバルなアロマが酸っぱすぎ。この香りで、どの部分が「ムスタッシュ(ヒゲ)」なのか、少々首をひねりたくなりますが、ユニセックスフレグランスの先駆のようにも語られるムスタッシュ、確かに女性がつけても鼻の下にヒゲが生えることもなくパートナーとシェアしていただけます。ポラロイドに映ったのが、いかにも女性好みなシャレオツ系のランチもやってるカフェというのもわかる気がしますが、食堂の三悪は「高い、(料理が出てくるのが)遅い、少ない」だと常々思っている店主タヌとジェントルマンは、小鳥のエサ程度なプレートランチを提供し、小1枚でお釣りの来ないようなカフェランチは、食堂の三悪(Axis of dining evil)に抵触すると考えています。最近はどこのカフェもまあまあ盛りが良くなってきましたけどね。
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Le 3 Homme de CARON (1985)

立ち上がり:むー上品な甘い香り。私には勿体ない感じ。ヒゲ&ハゲお断り!って感じがする
 
昼:香りが殆ど目立たなくなりました。よーく嗅ぐと微かに甘いけど。なんというか女性バンドの中に漢一人ギターで参加させられたような居心地の悪さが
 
15時位:粉っぽい香りが強くなってきます。昼よりパワーアップした感じが。
 
夕方:粉っぽくて甘いニュアンスは最後まで持続。自分には合わんなあ…これ。というかどういうタイプの男なら合うんだろうこれ?
 
ポラロイドに映ったのは:子供の頃、戯れに母の化粧品をつけてみた時に感じた未知の世界への恐れ
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Tanu's Tip :
 
キャロンが低迷期に突入した(と言ったら失礼ですが)1980年代に発売した香りは少なく、オードキャロン(1980)、ノクチューン(1984、のち2013年にEDPとしてリニューアル)、今回ご紹介するル・トロワシエム・オム(1985、ザ・サードマンとも)、モンテーニュ(1987)の4作だけで、キャロン100年の歴史の中でも現行品として公式にリニューアルを謳わず残っているのはこのル・トロワシエム・オムだけになります。発売当時の日本ではフランスのブランドにも拘わらず日本人で、しかも女性の調香師・亀井明子(ルージュエルメス(1984)、ミュールエムスクコロン(2003)などを担当)が手掛け、当時欧米では認知度の低い日本原産の柑橘類、ゆずの香りを取り入れたという事で話題が独り歩きしました。
 
さてどういう香りなのかというと、これが案外つかみどころのない、妙に埃っぽい香りが上がってくる不思議な香りで、男らしいかというとそうでもない、かといって女性もつけやすいかというとこれまたそうでもない、中性的とでもいうのが適格か、いや無性的とまではいかないまでも、80年代の男にしては脈打つ血潮感ゼロの低体温系シトラスアロマティックです。ここでジェントルマンが「粉っぽい」と表現しているのは、アビルージュのようなバニラアンバーからくるパウダリー感ではなく、むしろ処方にはないイモーテルでも過積載したのではないかと錯覚する、ベチバーやラベンダー、オークモスとクローブやコリアンダーのようなスパイスのバッドバランスからくる埃っぽい粉っぽさで、しかも持続が弱いので、何だかわからないうちに輪の中からいなくなってしまった中性的な細面の青年、というのが近似値でしょうか。男性の中では「なよなよしてるな、あいつ」、女性の中では「なんか男の子みたいだけどどっちなの、あの子」という、お母さんのお化粧品イタズラしたってダメ的雰囲気が、ジェントルマンのいう「女性バンドのヘルプで突っ込まれた男性ギタリスト、きっと長続きしない」居心地の悪さにも通じます。
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キャロンの名香の数々は流れ星のように消えて、たまに別人となって戻ってきたりしていますが、この香りや、恐ろしいヤタガンが大した変化もなく何十年も廃番にならないのは、キャロンは売り上げの大半をたった数本のメンズフレグランスで支えているので、これ1本外すとパワーバランスが崩れて大変なことになるのか、できるだけメンズのラインナップは「触らぬ神に祟りなし」で本当にダメな奴以外は見直しを先送りにしているのかもしれません。せいぜい、この3月にプールアンノムのパルファムが新発売になったくらいで、種類が増える分にはいいのでしょう。春だから、キャロンから何か一つ、と買っておいたル・トロワシエム・オムを選びましたが、個人的にはあまりお勧めしません。キャロンなら、男は黙ってプールアンノムだと思います。
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Habit Rouge EDP (2003)

A Gentleman takes Polaroids chapter nine : Gentleman in Spring
 
立ち上がり:爽やかでシトラス系の香り、微かにレザー系も混じってるのが男向けを感じる。甘い匂いも隠れてる・・・・この段階では
 
昼:甘さが前面に出てくる。腹出たオッサンには似合わないー。自分が20代で上司がこんな香りさせててハゲデブだったら「何こいつ?変態?」と思いそう。社内の目が怖い・・・・
 
15時位:甘さそのまま、粉っぽい雰囲気も表面化。ますますつけてる実態との乖離が進行。
 
夕方:甘い香りがおさまってきたが粉っぽい香りは持続。というか前面に出てきた。
 
ポラロイドに映ったのは:女装するクマ先生(マカロニほうれん荘)
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Tanu's Tip :
 
三寒四温の春にとってふさわしい香り、それはしっかりボディがありながら、表層に爽やかな風が流れているような、お菓子で言ったら上が寒天で下があんこ、みたいな「二層構造」のマグマとマントルになっているのが、肌の近くでは体を温め、鼻のそばでは爽やかに…なんて都合のいい香りなんてあるの?あるんです。まあ、それって裏を返せば「原料が混然一体となっていない」「ちょっと本体から幽体離脱」ともいえるんですが、着け心地が良ければいいじゃないですか。
 
2003年、新たにラインナップされたゲランのメンズ・クラシック、アビルージュのオードパルファムも、オリジナル版EDTの作者ジャンポール・ゲランが手掛けており、奥にはしっかり甘いゲルリナーデがあるうえで、立ち上がってくるのは同じくゲランのベチバー(1961)をルーツにしたドライなシトラスレザーで「秋のジェントルマン」でご紹介したオリジナルのオードトワレ版よりゲルリナーデの積載量が多い分、ほんのちょっと二層構造化している気がします。EDTよりぐっとアンバーバニラ感が濃厚で、そこがジェントルマンのいう「粉っぽい雰囲気」なんですが、より女性向けになっています。実際、私がつけても「こ、これはいい…」と、今般の女性向け香水では味わえない心地よいクラシック香水の旋律に快く身をゆだねることができまして、決してつけた瞬間男性ホルモンが活性化し、鼻の下にヒゲが生えたり頭頂が薄くなったような気分にはならず、正直申し上げて昨今ゲランが大3枚とか4枚で売ってるようなものや、有名女優のふんどしで世界市場(特に米)への飛躍を狙う新製品を買うのなら、LPTファンはこの辺りをきりりとつけこなして欲しい所です。ちなみにアビルージュのEDPは日本未発売ですが、海外通販や並行輸入品で普通に100mlボトルが大1枚でおつりにて入手可能です。ジェントルマン曰く「アビルージュなら、男性にはEDTをお奨めします」との事、ではご婦人はEDPを選んで、完全なるペアフレグランスとして麗しい春をお過ごしください。え、1本をシェアしたい?それなら私としては殿方にはちょっと女装な気分も味わっていただけるEDPがお奨めです。ノー?ワンスモア、ノォ~ッ!!
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 f:id:Tanu_LPT:20170326095119j:image参考:クマ先生の女装(マカロニほうれん荘) 全然似てませんが、まあ路線的にはこんな感じです