La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Moustache (1949)

立ち上がり:なんか酢のような酸っぱい匂いがするんですが。もしかして劣化してる?ベルガモットの香りがその後を追うように香ってきます
 
昼:酸っぱい匂いなくなりようやくまともな香水の香りだ。ローズ系の香りが強まってきています。
 
15時位:バニラっぽい香りに変わってきた。時間を経るごとにどんどん香りが変貌してきます。
 
夕方:最後の方はムスクっぽい。HABIT ROUGE程ではないけど今回の3本は私ごときで対抗できる香りではないな・・・負けそう・・
 
ポラロイドに映ったのは:軽い気持ちで昼飯食べようと思い入ったら客がほぼ全員女!あまつさえ量も少ない「プレート」なるしゃらくせえ名前の飯を食わせる店に入ってしまった時の敗北感。
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Tanu's Tip : 
 
ムスタッシュは「ムッシュ、ムッシュ、ジェントルマン」の回でもご紹介した、ロシャス初のメンズフレグランスで、調香はロシャスにおいてはファムを作り同社の成長に大いなる貢献をしたエドモン・ルドニツカとその妻、テレーズ・ルドニツカの共作で、とうの昔に廃番ですが、販売当時は結構売れたのか、現在でも箱のてっぺんが日焼けして退色した、バーコード印刷のない(≒80年代後半までの流通品)スーパーデッドストックが時折亡霊のように海外香水ディスカウンターの販売リストに登場しています。著名人が手掛けた名香ならば、箱が日焼けしていても新品なら手に入れたいのが人情というもの、新品だから、新品なんだから…と入手したものの、グレーの部分がペパーミントグリーンに変色した、その箱の焼けっぷりにビビりながらも、ジェントルマンは果敢にレビューを決行。ファーストコンタクトで「す、酸っぱい…」とひるみながらも、きちんと経時変化を記録してくれました。
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この酸っぱいのは、レモンとレモンバーベナがベルガモットと共にガツンと立ち上がってくるためで、通常ヴィンテージだとこのシトラス部分がやけて飛んでいる事が多いのですが、さすがディスカウンターとはいえ新品扱いの強気で販売しているだけあって、酸っぱいのは劣化だけではなく、ムスタッシュのトップノートの個性だと思われます。ジェントルマンが酸敗臭と勘違いしたトップノートが過ぎ去ると、ローズ・ジャスミン・カーネーションといった王道フローラルノートが顔を出し、その後バニラの幕、ムスクの幕…とパウダリーに変化するという、クラシック香水の序破急がはっきりとしたノート展開があります。個人的に、ルドニツカ作のシトラスアロマティックシプレ系(オーソバージュ、ディオレラなど)が少々苦手で、というのもどこかに生肉のような生臭さを微かに感じるからなのですが、このムスタッシュも気持ちなんとなく生臭い。それにレモンバーベナやラベンダー、プチグレンなどのハーバルなアロマが酸っぱすぎ。この香りで、どの部分が「ムスタッシュ(ヒゲ)」なのか、少々首をひねりたくなりますが、ユニセックスフレグランスの先駆のようにも語られるムスタッシュ、確かに女性がつけても鼻の下にヒゲが生えることもなくパートナーとシェアしていただけます。ポラロイドに映ったのが、いかにも女性好みなシャレオツ系のランチもやってるカフェというのもわかる気がしますが、食堂の三悪は「高い、(料理が出てくるのが)遅い、少ない」だと常々思っている店主タヌとジェントルマンは、小鳥のエサ程度なプレートランチを提供し、小1枚でお釣りの来ないようなカフェランチは、食堂の三悪(Axis of dining evil)に抵触すると考えています。最近はどこのカフェもまあまあ盛りが良くなってきましたけどね。
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Le 3 Homme de CARON (1985)

立ち上がり:むー上品な甘い香り。私には勿体ない感じ。ヒゲ&ハゲお断り!って感じがする
 
昼:香りが殆ど目立たなくなりました。よーく嗅ぐと微かに甘いけど。なんというか女性バンドの中に漢一人ギターで参加させられたような居心地の悪さが
 
15時位:粉っぽい香りが強くなってきます。昼よりパワーアップした感じが。
 
夕方:粉っぽくて甘いニュアンスは最後まで持続。自分には合わんなあ…これ。というかどういうタイプの男なら合うんだろうこれ?
 
ポラロイドに映ったのは:子供の頃、戯れに母の化粧品をつけてみた時に感じた未知の世界への恐れ
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Tanu's Tip :
 
キャロンが低迷期に突入した(と言ったら失礼ですが)1980年代に発売した香りは少なく、オードキャロン(1980)、ノクチューン(1984、のち2013年にEDPとしてリニューアル)、今回ご紹介するル・トロワシエム・オム(1985、ザ・サードマンとも)、モンテーニュ(1987)の4作だけで、キャロン100年の歴史の中でも現行品として公式にリニューアルを謳わず残っているのはこのル・トロワシエム・オムだけになります。発売当時の日本ではフランスのブランドにも拘わらず日本人で、しかも女性の調香師・亀井明子(ルージュエルメス(1984)、ミュールエムスクコロン(2003)などを担当)が手掛け、当時欧米では認知度の低い日本原産の柑橘類、ゆずの香りを取り入れたという事で話題が独り歩きしました。
 
さてどういう香りなのかというと、これが案外つかみどころのない、妙に埃っぽい香りが上がってくる不思議な香りで、男らしいかというとそうでもない、かといって女性もつけやすいかというとこれまたそうでもない、中性的とでもいうのが適格か、いや無性的とまではいかないまでも、80年代の男にしては脈打つ血潮感ゼロの低体温系シトラスアロマティックです。ここでジェントルマンが「粉っぽい」と表現しているのは、アビルージュのようなバニラアンバーからくるパウダリー感ではなく、むしろ処方にはないイモーテルでも過積載したのではないかと錯覚する、ベチバーやラベンダー、オークモスとクローブやコリアンダーのようなスパイスのバッドバランスからくる埃っぽい粉っぽさで、しかも持続が弱いので、何だかわからないうちに輪の中からいなくなってしまった中性的な細面の青年、というのが近似値でしょうか。男性の中では「なよなよしてるな、あいつ」、女性の中では「なんか男の子みたいだけどどっちなの、あの子」という、お母さんのお化粧品イタズラしたってダメ的雰囲気が、ジェントルマンのいう「女性バンドのヘルプで突っ込まれた男性ギタリスト、きっと長続きしない」居心地の悪さにも通じます。
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キャロンの名香の数々は流れ星のように消えて、たまに別人となって戻ってきたりしていますが、この香りや、恐ろしいヤタガンが大した変化もなく何十年も廃番にならないのは、キャロンは売り上げの大半をたった数本のメンズフレグランスで支えているので、これ1本外すとパワーバランスが崩れて大変なことになるのか、できるだけメンズのラインナップは「触らぬ神に祟りなし」で本当にダメな奴以外は見直しを先送りにしているのかもしれません。せいぜい、この3月にプールアンノムのパルファムが新発売になったくらいで、種類が増える分にはいいのでしょう。春だから、キャロンから何か一つ、と買っておいたル・トロワシエム・オムを選びましたが、個人的にはあまりお勧めしません。キャロンなら、男は黙ってプールアンノムだと思います。
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Habit Rouge EDP (2003)

A Gentleman takes Polaroids chapter nine : Gentleman in Spring
 
立ち上がり:爽やかでシトラス系の香り、微かにレザー系も混じってるのが男向けを感じる。甘い匂いも隠れてる・・・・この段階では
 
昼:甘さが前面に出てくる。腹出たオッサンには似合わないー。自分が20代で上司がこんな香りさせててハゲデブだったら「何こいつ?変態?」と思いそう。社内の目が怖い・・・・
 
15時位:甘さそのまま、粉っぽい雰囲気も表面化。ますますつけてる実態との乖離が進行。
 
夕方:甘い香りがおさまってきたが粉っぽい香りは持続。というか前面に出てきた。
 
ポラロイドに映ったのは:女装するクマ先生(マカロニほうれん荘)
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Tanu's Tip :
 
三寒四温の春にとってふさわしい香り、それはしっかりボディがありながら、表層に爽やかな風が流れているような、お菓子で言ったら上が寒天で下があんこ、みたいな「二層構造」のマグマとマントルになっているのが、肌の近くでは体を温め、鼻のそばでは爽やかに…なんて都合のいい香りなんてあるの?あるんです。まあ、それって裏を返せば「原料が混然一体となっていない」「ちょっと本体から幽体離脱」ともいえるんですが、着け心地が良ければいいじゃないですか。
 
2003年、新たにラインナップされたゲランのメンズ・クラシック、アビルージュのオードパルファムも、オリジナル版EDTの作者ジャンポール・ゲランが手掛けており、奥にはしっかり甘いゲルリナーデがあるうえで、立ち上がってくるのは同じくゲランのベチバー(1961)をルーツにしたドライなシトラスレザーで「秋のジェントルマン」でご紹介したオリジナルのオードトワレ版よりゲルリナーデの積載量が多い分、ほんのちょっと二層構造化している気がします。EDTよりぐっとアンバーバニラ感が濃厚で、そこがジェントルマンのいう「粉っぽい雰囲気」なんですが、より女性向けになっています。実際、私がつけても「こ、これはいい…」と、今般の女性向け香水では味わえない心地よいクラシック香水の旋律に快く身をゆだねることができまして、決してつけた瞬間男性ホルモンが活性化し、鼻の下にヒゲが生えたり頭頂が薄くなったような気分にはならず、正直申し上げて昨今ゲランが大3枚とか4枚で売ってるようなものや、有名女優のふんどしで世界市場(特に米)への飛躍を狙う新製品を買うのなら、LPTファンはこの辺りをきりりとつけこなして欲しい所です。ちなみにアビルージュのEDPは日本未発売ですが、海外通販や並行輸入品で普通に100mlボトルが大1枚でおつりにて入手可能です。ジェントルマン曰く「アビルージュなら、男性にはEDTをお奨めします」との事、ではご婦人はEDPを選んで、完全なるペアフレグランスとして麗しい春をお過ごしください。え、1本をシェアしたい?それなら私としては殿方にはちょっと女装な気分も味わっていただけるEDPがお奨めです。ノー?ワンスモア、ノォ~ッ!!
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 f:id:Tanu_LPT:20170326095119j:image参考:クマ先生の女装(マカロニほうれん荘) 全然似てませんが、まあ路線的にはこんな感じです
 
 
 

The Unforgettable Scent Vol.7 : The Scent of EXPO

- Tanu of LPT has contributed to the exclusive perfume magazine "PARFUM" a series of articles on iconic classic perfumes, entitled "The Unforgettable Scent" since June 2015. The following English translation is "The Scent of EXPO", the 7th article for PARFUM magazine no.180 issued in Dec. 2016, translated by Tanu -
 
The Unforgettable Scent Vol.7 :
The Scent of EXPO
 
2016 is the 155th Anniversary of EXPO
 
Did you know that Dubai EXPO will be held in 2020 ? EXPO 2016 also marked the 155th anniversary of The Great Exhibition, held in London in 1851. Many countries have taken part to exhibit their latest technology and art to the world, at Universal Exposition (EXPO) and have considered it as a showcase for future business. In fact, many Perfumeries used to receive "The Award of Technology" or "The Award of Excellence in Art" at the early EXPOs. The award winners certainly grabbed the opportunity to promote their products, with the promise of a glorious future.Such an award, was as prestigious as a Royal Warrants in that time. Today, I will introduce the two revived EXPO awarded perfumeries and how their masterpieces were reborn.
 
Grossmith, the scent of The Great Exhibition in London
 
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Shem-el-Nessim parfum 10ml

 

"The Great Exhibition of 1851" (now EXPO) was held in the prime of Victorian period. It was based on the idea of Queen Victoria's husband Prince Albert, and staged with his particular interest and assistance. The Great Exhibition was an enormous successe.
It was held in London's Hyde Park, within what became known as "The Crystal Palace" a huge beautifully made structure of Glass and Iron, and was a symbol of Victorian style.
Grossmith, founded in 1835, was the only English company to be awarded a prize medal at The Great Exhibition for perfumes and essential oils. Although the company was awarded Royal Warrants by Queen Alexandra, together with the Royal Courts of Greece and Spain, from 1901 to 1925, they had sadly become dormant by early 1980s being unable to continue their business.
After 30 years, Simon Brooke, the Great Great Grandson of the founder John Grossmith, re-established the company name at his own expense. Shem-el-Nessim (1906) named after an Arabian springtime festival celebrated in Egypt, was launched during their golden age. Not strictly Oriental as the name sounds, Shem-el-Nessim has a rich and smooth powdery floral scent, with a mauve cloud, which personifies the Edwardian era in which femininity was feted. It's tremendously well crafted, especially reprises the original 1906 formula, using rare and expensive Florentine iris (costing three times more than gold bullion) together with Heliotrope and Sandalwood. I can imagine a very warm-hearted, and generous lady, enjoying anEgyptian feast with her beloved ones, on a pleasant spring day. Grossmith even went as far as re-creating crystal flacons, using their original Baccarat moulds from 1919. As far as I know, Grossmith could be the most uncompromising perfume house, by reproducing such exquisite creations.
 
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Grossmith Baccarat Collection (right : Shem-el-Nessim)
 
Isabey, the scent of Art-Deco EXPO
 
The International Exhibition of Modern Decorative and Industrial Arts 1925, one of World's fairs held in Paris, was famous for the EXPO in which the descriptive title Art0Deco was coined. It was a very French exhibition, which was retrospective towards traditional style and classicism, rather than the Avant-Garde art, such as Cubism etc.
As the United States and Germany did not attend this particular exhibition, it gave Isabey (a new arrival Parisian perfumery founded in 1924, a year before EXPO) a chance to grab the Gold Prize. Instantly the name of Isabey spreaded from Paris to encompass the world. La Route d'Emeraude, inspired by "The Emerald Triangle" where the three countries of  Thailand, Laos and Cambodia meet, was the most appraised creation among the Isabey line-up, and countless adverts of the period still remain.
Closed in 1941 due to WW2, the perfume house was revived by the parent company Panouge in 2006, with the re-birth of La Route d'Emeraude in 2012 as the modern interpretation of the original formula. It has very much French Vive, contrary to the exotic name, owing to two different Jasmin oils - Jasmin Sanbac and Morrocan Jasmin Aabsolute, harmonised with Tubereuse, Benzoin and Amber. This matte sweetness evokes the great classics of the 1920s, as well as lavish Floriental fragrances of the 1980s. The sweet waft from your coat collar, suits the chill air in winter. The bottle, originally desinged by Julien Viard is housed in an exotic yellow case with a double door. 
 
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La Route d'Emerude eau de parfum 50ml
 
I am very looking forward to EXPO 2020 in Dubai, anticipating how Arabian perfumeries will respond to the Western World, through their own rendering of oriental fragrances.
 
translated by Tanu of LPT, proof written by David Whitnell

 

 

proof-writing : David Whitnell

Parfum magazine no. 181 coming out

一作年6月よりスタートいたしました店主タヌの連載「忘れられない香り-The Unforgettable Scent-」掲載の老舗香水専門誌、パルファムの最新刊・181号が、今月3月20日(月)発売となりました。

季刊誌であるパルファムは、日本を代表する香水評論家、平田幸子先生が長らく編集長をつとめ、基本的には国内発売される新作香水紹介やショップインタビューを中心とした専門誌ですが、掲載テーマは香水にとどまらず、芸術、文化、シネマ、ファッションなど各方面から力量確かな執筆者の多岐にわたる寄稿もその魅力のひとつです。

今回の本誌特集のテーマは新たなる春に相応しく「幸せ香水」。日本人にとって春は色々な節目の時期でもあり、新しい環境、新しい出会い、そして新しい幸せに巡り合える季節でもあります。そんな気持ちも上がる季節に相応しい逸品を、パルファムならではのセレクションでご紹介いたします。

「忘れられない香り - The Unforgettable Scent」は、La Parfumerie Tanuとしてはこれまた新たなる春に相応しく、新機軸であるオペラのヒロインを題材とした香りをふたつご紹介。さて、どのヒロインが登場するかは読んでのお楽しみ。今回も心と記憶にこびりついて離れない「香り」と、香りにまつわる千夜一夜を、店主タヌが語り部として綴ります。ブログ同様、パルファムでの連載も是非お楽しみ下さい。

今回で丸2年、足掛け3年目に突入、第8回目となる連載ですが、是非とも定期購読のご継続(または電子版によるご購読)をお願いいたします。連載継続もひとえにLPTファンそしてパルファム愛読者の皆様の暖かいご支援によるものと感謝し、これからも心をこめて「忘れられない香り」をご紹介してまいります。

パルファムは定期購読(年4回分前納/送料込2,400円)にてお手にとっていただけます。

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パルファム181号表紙 珍しい黒の背景でシックに

 

【パルファムは電子版でもご購読いただけます】

※連載「忘れられない香り(The Unforgettable Scent)」開始号である174号より紙媒体の本誌にあわせ電子版がスタートしました。普段オンラインベースでご愛読いただいているLPTファンの皆様へ、本誌と併せ電子版での購読もお奨めいたします。閲覧用無料アプリはiOS・Android双方対応。※パルファム誌購読コンテンツ料としてアプリ内課金が発生します。

 

《ダウンロードはこちら》  2017年3月21日(火)以降配信開始

 

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