La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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XS pour homme (1994)

立ち上がり:爽やか系の香りですが少々森っぽい感じも というか20年ほどまえ良くつけてたので懐かしいな
 
昼:落ち着いた香りになってきました。これなら今でも使えそう
 
15時位:ムスクっぽい香りが最後に少し出てきました。かなり朝とは印象が違う
 
夕方:最後まで良い感じに残香が感じられる。早い時間ではやはり私のような年齢ではなくもう少し若い方がつける感じでしたが、1日トータルだとまだまだ使えそうな印象。
 
ポラロイドに映ったのは:まだ腹もそんなに出ていない多少若者の面影があった頃の自分。
 
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XS(エクセス)プールオム EDT50ml 現在は日本未発売
 
Tanu's Tip :
 
日本ではすっかり勢いのなくなったように思えるブランド、パコ・ラバンヌですが、それこそ初の香りであるカランドル(1969)からパコラバンヌ・プールオム(1973)、メタル(1979)、ラニュイ(1985)など、時代の顔というべき先進的でスタイリッシュな香りや、現在でも定番中の定番を数多く輩出しただけでなく、欧米では今でも第一線を誇る人気フレグランスブランドで、欧州線の乗り継ぎ時に寄る免税店のフレグランスコーナーや、街の香水店や薬局の香水売場に行くと、日本では信じられないくらい幅を取って、最新作やヒット作が本で言ったら平積み状態でディスプレィされています。勿論その「第一線の人気」というのは、大衆香水としての人気で、ドラッグストア系香水の上、デパート香水の下、という位置づけですが、イコール最大公約数の層をがっつり掴んでいるわけで、安くもなく高くもない、ここがメインストリームのど真ん中、というか中道なのかな、という気もします。最近のメガヒットはレディミリオン(2010)で、沢山のドジョウも生まれています。確かに広告の路線を見ると派手派手の若者向けでチンピラ臭いのですが、レディミリオンなどはイギリスの地方都市では売上№1で幅広い年齢層に支持されている(2015年秋時点)ので、そこも趣味嗜好の中道なのだと思えば、同じボトルデザインがずらりとか、シンプルイズベストとか、原料がどうのとか、調香師が誰とか、昔の香水は良かったとか、そういうのばかりが正解じゃないんだ、と世の中色々な人がいる事が理解できます。本来はこの層、大衆香水に飽きの来ない良いものがもっと出てきて、それを長く売りつないで欲しいのです。
 
さてそのパコラバンヌが、スタイリッシュ路線から大衆若者チンピラ路線へとかじ取りを変え始めた90年代半ばに大ヒットして、23年経った今でもロングセラーのXS(エクセス)プールオム、調香は親会社プッチの作品を数多く手がけるロセンド・マテウとアザロ・プールオム(1978)を作ったジェラール・アンソニーの共作です。XSはジェントルマンが店主タヌから初めてプレゼントされた香水で、以降ジェントルマンは一度も自分の腹を痛めることなく、香水を浴びるように使える得難き星をつかんだのですが、それが善星か凶星かは本人もわからない、というか毎月毎月あれ嗅げこれ書けと煽られるのですから、輝ける凶星、と言えましょう。
 
香りとしては、20代半ばのボーイフレンドに、自分だけ海外旅行に行き、免税店でお財布の中身とだけ相談して、相手の趣味嗜好を気にせず買って「はいこれお土産」とプレゼントしても喜んでくれて、そして問題なく使い切ってくれる、適度にカッコよくて、適度にスッキリして、はしゃぎすぎでもなく、渋くもない、中々もちも良くて、難しくないソーピーでフレッシュなウッディアロマティックで、とても使い勝手がいい香りです。今でもさほど古くなっていないのは、全く奇を衒った香りではない証拠。私も正直ジェントルマンが「昔よくつけていた、懐かしい」と言ってくれて、あの頃の自分が一つ輝いた、そんなあったかい気持ちになりました。ポラロイドにもその若かりし頃のジェントルマンが映り、久しぶりにご本人登場となりました。ちなみにその頃からジェントルマンは30キロ増量、人間のスケールも1.5倍と立派に成長しました。
 
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ジッポのデザインからインスパイアされたボトル この後21世紀に入り金の延べ棒(ワンミリオン)、ダイヤモンドの塊(レデイミリオン)、トロフィーカップ(インヴィクタス)と徐々にデザインがチンピラっぽくなっていくが、このボトルはさすが名匠ピエール・ディナン作

 

 

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